バイオセンサー:AMC 始動(3)

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さて、前回、本当にバイオセンサーを製造するのにインクジェットって役に立つのか、みんながなんて言ってるか調べてみますねということで終わりました。その話題に入る前に、一つ最近あった、私のボケたストーリーを共有しようと思います。

血糖値センサーにおける酵素の正体

このバイオセンサーって、実際に何に使われてるんだろうと調べたんですが、本当に色々あるものの、身近というか、ユーザーが多いのは血糖値のセンサーだということがわかってきました。私の周りにも、糖尿病でこの血糖値センサーを使われている方がいたのですぐにどれのことを指しているのかわかりました。下記画像は、よくAmazonでも入手できる血糖値センサーです。こちらは2極ですね。機械に刺さるところは3極あるのですが、大抵2つはすぐに短絡するようになっていて、センサーストリップがちゃんと機械に刺さったかどうか確認するための工夫のようです。こちらの特許を読むとそう書いてあります。




また、弊社には3極の電気化学センサー自体はありまして、下記のセラミックの上に金電極と、銀塩化銀電極が形成されているものがそれにあたります。



このDropSens社のポテンショスタットに弊社で製造した電気化学センサーもつなげてみて性能試験をして、十分機能するところまで調べたことがあります。下記がその試験したセンサーになります。

電気化学センサー

実験の様子はこちら

Metrohm 社製 PGSATAT204 P-Flex®による W:Au C:Au R:Ag / AgCl 電極にて測定

ちなみにこちらのリンク先にある、フリースタイルリブレセンサーはつけっぱなしにできるセンサーで、あまりに深い考え事をしているときは糖分をガンガンとらないと、スパッと思考継続が難しくなってしまう自分としてはいつか使ってみたいセンサーです。血糖値スパイク観測したい!でもこれが3極の電気化学式かはよくわからないです。やっぱ今度研究のために購入してみようかな。

で、この血糖値をはかるバイオセンサーを1年前に自作してみようと思って材料を買い集めました。実は当時は実際作るところまでは進んだけど、その機能を自分で確認するところまで行かなかったので発表はできなかったんですが・・・。そのときにもちろん酵素も買いました。グルコースオキシダーゼ from Aspergillus niger なんてのを購入しました。めっちゃ高かったですね。で、これずっとアスパラガスって読んでたんですよ、愚かにも。アスパラガス由来の酵素を買ったとずっと思ってたんですが、最近になってもう一度調べる過程で、アスパラガスと酵素で検索しても全然でてこないんですよ。で、改めて論文読んで、翻訳かけたら、アスペルギルス=麹由来だったんですね。そうです、あの、A・オリゼーのAはアスペルギルスだったんですよ。で、工業的にはそのお友達のA・ニガーという黒麹から作られるようで、それが前述のグルコースオキシダーゼの正体だったのです。なんだよ、最初からオリゼーとかニガーとか言ってくれればわかったのに!と、『もやしもん』読者の私としては思いましたね。まさかこんなところで、漫画の知識が役に立つとは思いませんでした。大事なことはだいたい漫画が教えてくれる。

グルコースオキシダーゼの乾燥は大変

さて、そのグルコースオキシダーゼ(以下GOX)等酵素を複数印刷するのに乾燥が大変なのでインクジェットが素晴らしいというのはどういう仕組?という解説をするんでした。そこで、GOXって何度くらいで何時間くらい乾燥するのかしらと調べてみました。

まず、GOXを皆さん「固定」すると表現されてます。実際、GOXは先日購入したときも、小さなケースに入った黄色い粉でして、水に溶かしてインクにしましたから、対象の溶液に接触させたときに表面に塗ってあるだけだと流出しちゃうので、それを防ぐために「固定」するという表現になっているようです。一方で、「修飾」という言い方もあります。電極の表面に何らかの加工を施して機能を付与する行為を「修飾」するというそうです。野中・渕上(1985) によると、その10年前だから、1975年くらいから修飾電極というのが認知され多く使われるようになったらしいです。この用語を知っておくと、バイオセンサー周りで資料を読んでいて理解しやすくなります。

それで、GOXを固定するときの乾燥方法にはほんと色々あるので、何とも言えないのですが、私が直近読んだ論文を参考にさせていただくと、Wangら(2012) GOXが混ざっている溶液をインクジェット印刷した後に25℃ 24時間で乾燥させるのが良さそうということになっています。まぁ実はこの論文は、4℃、25℃、37℃で24時間乾燥させた結果を比較してるんですが、電極の表面をきれいに覆うように印刷、乾燥をさせないと性能が出ないので、この3つだと25℃のやつが一番キレイに乾燥できたという話をしているわけです。4℃のときのトラブルは、コーヒーリング現象ですね。これは、インク乾燥あるあるでして、もちろん銀ナノインクの乾燥でも注意しなければいけない現象になります。ちなみに、コーヒーリング現象についてはこの解説記事がめちゃわかりやすかったのでおすすめです。
プリントとかにできちゃう染みで起きる現象が、サイエンスの最前線であったり、テクノロジーの最前線のテーマーになってるってのは好奇心を掻き立てられますよね。この論文では、インクジェットヘッドからのインクの吐出のしやすさと、インクを弾きやすいカーボンでできている電極へ着弾後にきれいに塗れ広がる性能の両立を図る形で界面活性剤をいい塩梅で混ぜているようですね。いやー勉強になる。で、この論文の様子から見ると高くても37℃位でやるのがいいみたいですね、しかし24時間もかかるようです。

酵素って乾燥させるのに、低温でやらなければいけない関係で、長時間の乾燥時間が必要だという例をピックアップしました。次回は、「複数の酵素を塗らないといけない場合」というのはどういうことなのか調べてみましょう。