バイオセンサーと酵素:AMC始動(4)

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エレファンテック杉本です。
いやー、思ったような論文ってスムーズにみつけられないですよね。今回は、バイオセンサーの製造において、検出する対象の物質と反応する酵素が複数必要な場合を紹介しようと思ってたんですが、今回ピックアップする実例が酵素ではなく、抗体になってしまいました。しかし、ここで酵素と抗体って何が違うんだろうかという点は重要だと思ったのでまず、その点について調査してみました。

下記の資料などがわかりやすかったのですが、機能性タンパク質というカテゴリーの中に、酵素も抗体も入ってるんだなと。またその機能仕方によって、分類されているのだとよく理解しました。
http://www2.huhs.ac.jp/~h990002t/resources/downloard/14/14biochem1/2014functionalprotein.pdf
https://www.sciencedirect.com/topics/medicine-and-dentistry/enzyme-antibody

このsciencedirectのリンクの記事にある、”Principles of Regenerative Medicine”という本から一部転載されているTable 37.2の表によると、酵素も抗体もバイオセンサーに使われるって書いてありますね。他にも、フィブロネクチンがバイオセンサーという記載があるので、そちらも使われることがあるのでしょう。非常に勉強になりました。

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機能 種類 具体例 用途
触媒作用と代謝の調整 酵素 プロテアーゼ、デヒドロゲナーゼ、他 バイオセンサー、バイオリアクター、抗がん剤治療、抗血栓性表面
情報を運ぶ ホルモン・サイトカイン・増殖因子 インシュリン、インターロイキン 抗がん剤治療、自己免疫疾患および炎症状態の治療、創傷修復の強化
遺伝の仕組みに関与 DNA・RNA結合タンパク 基本転写因子群 多種多様な疾患に対する遺伝子治療、DNAプローブ
細胞の構造・運動 構造タンパク質・モータータンパク質 ミオシン、コラーゲン バイオセンサー、アレイ、デバイス、組織工学的構築物における細胞接着と機能
免疫機構 抗体・補体 イムノグロブリン バイオセンサー、バイオセパレーション、抗がん剤治療

表1 各機能性タンパク質の機能と用途
http://www2.huhs.ac.jp/~h990002t/resources/downloard/14/14biochem1/2014functionalprotein.pdf
https://www.sciencedirect.com/topics/medicine-and-dentistry/enzyme-antibody より改変

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抗体の耐熱性

ちなみに、ではこの抗体も熱に弱いんですよね?というのを確認してみました。よく考えれば両方タンパク質なので、低温調理器でよくギリギリを狙う温度帯が壊れる境界線なんだと思いますが、念の為論文をチラ見します。

低温調理器による肉料理の解説はこちらがわかりやすかったです。
https://otokonakamura.com/lowtemper02/

抗体の耐熱性を調べたところ、羽生(1958)による研究を見つけました。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjh1946/14/2/14_2_147/_pdf

読んでみると、当たり前なんですが、低温調理の知識からの類推はあたってますね。65℃でも一部壊れちゃったりするみたいなんで、抗体を含む機能性タンパク質のインクは50℃以下、できれば常温に近い温度で乾燥させたいところです。ちなみに、これらの機能性タンパク質は生物の中にあるものであることが多く、基本的には生理食塩水やリン酸緩衝生理食塩水に溶解させて印刷することが多いと思います。溶剤ベースにすれば常温乾燥も早くすることができるとは思うんですが、それができない事情は水ベースのインクであるところにあります。ちなみに、弊社が得意とするエプソン製ヘッドは粘度の低い水ベースのインクを高解像度に長期間安定して印刷することに強みがあります。

複数の機能性タンパク質を印刷している例

さて、ようやく機能性タンパク質を複数種類印刷している実例の登場です。いくつかあった中でも今回は、血液型を1枚の試験紙で、結果を光学的に確認ができる Li, et al. (2012)をピックアップします。
https://eis.hu.edu.jo/ACUploads/10979/Paper-Based%20Blood%20Typing%20Device%20That%20Reports%20Patients%20Blood%20Type%20(1).pdf

この論文はもちろん研究自体も素晴らしいのですが、着想は『ハリーポッターと秘密の部屋』に出てくるTom Riddlesの日記と記載されており、ちゃんと引用文献として扱ってるんですね。Tom Riddlesってあの人ですよ、ま、ネタバレになるんでこれ以上は書きませんが。それで、本研究では、(Anti-A,Anti-B,Anti-D)3種類の抗体をインクジェットで印刷しています。3種類の抗体で血液検査ができるという仕組みは下記にも解説が詳しいです。
http://yuketsu.jstmct.or.jp/general/for_blood_type/

本研究のトランスデューサーはCCDと捉えることができます。ただ、目視でも十分識別できるので、救急の現場などで役に立ちそうなセンサーに仕上がっています。これら3種類の機能性タンパク質インクを印刷するのに、シルクスクリーンなどの方法では乾燥プロセスを考えるとたしかに大変そうです。インクジェットの、非接触印刷である特徴が非常に生かされた作例であると思いました。

インクジェットの特長


酵素を溶かして印刷することが多い、PBS溶液の吐出画像


ここでインクジェットの特長を整理すると
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  • 非接触で複数のインクを塗布できる
  • 無駄が少なく、必要な量だけの微量のインクで印刷できる
  • 版がないデジタルマニュファクチャリングである

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等が挙げられると思います。いくつかの論文でちゃんとコメントしてくれているので、それらを順にピックアップしてバイオセンサー製造においてインクジェットがどのような評判なのか一緒に見てみましょう。