【AMC インタビュー :2】Nature Architects 大嶋さんに伺う、AMC への期待 (前編)

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AMCへの期待について、各方面で活躍されていらっしゃる方にホットなお話しを伺うインタビューシリーズです。
第二回目のゲストはNature Architects 代表取締役 / CEOの大嶋 泰介さんです。
今回は、Additive Manufacturingの「ハマる」ポイントやAdditive Manufacturingが未来を作るために乗り越える壁とは何だろうかということを中心にお話を伺いました。

大嶋 泰介さん

Nature Architects 代表取締役 / CEO
東京大学総合文化研究科広域科学専攻広域システム科学系博士課程単位取得退学。独立行政法人日本学術振興会特別研究員(DC1)、筑波大学非常勤研究員などを経て、2017年5月にNature Architectsを創業。メカニカル・メタマテリアル、コンピュテーショナルデザイン、デジタルファブリケーションの研究と、物質の弾力や変形を計算し、幾何構造によって自在に設計・製作・制御するための技術開発に従事する。独立行政法人情報処理推進機構より未踏スーパークリエータ、総務省より異能ベーションプログラム認定。
Nature Architects:https://nature-architects.com

インタビュアー:杉本 雅明

杉本雅明
エレファンテック株式会社, 取締役副社長

東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻 修士課程修了。
慶應義塾大学大学院システムデザインマネジメント研究科後期博士課程単位取得退学。
2014年1月エレファンテック株式会社共同創業、取締役副社長就任。

Nature Architectsについて

杉本:
大嶋さんとは今までいろいろ一緒にやってきましたが、大嶋さんの会社の概要を教えてください。

大嶋:
設計の会社です。ただ、やっている設計がすごい特殊で、メタマテリアルとかコンプライアントメカニズムという、「様々な機能を生み出す構造」を使った機能設計というものをやっています。

製造業の様々な業種の方達をお客さんにしていて、例えばエアコンのダイキンさんだったら、エアコンの室外機がブルブル鳴っていてうるさいですとか、エアコン自体がうるさいです、の様な問題があります。その問題を解決する構造を設計して、製品に組み込みます。

これはエアコンの例ですが、音がなくなりましたとか、製品の付加価値が大きく上がりましたみたいなことを、あらゆる業界で、僕たちが製品のコアになっている部分の機能の設計をして、製品のここを付加価値にするとか、製品の中になる課題を解決するみたいなことをやって、一緒に製品の開発を大企業と、特に量産にいくような製品の開発をやっているみたいな会社です。

さらにこうした構造物による機能設計を行うために必要となるDFM(Direct Functional Modeling)と呼んでいるソフトウェア技術を開発し社内で運用していたりもします。

杉本:
それって、射出成型とか他の方法でも、なんでもいい形なんですか?それともなんかやっぱりアディティブマニュファクチャリング(以下、AM)の形になることが多いんですか?

大嶋:
AMではないプロジェクトの方が実際は多いです。量産品を大企業と作りに行ってるので、射出とかプレスが前提の物とか、ちょっと込み入った物だと、マシニングで製作などになります。

ただもちろんアディティブのプロジェクトもあって、アディティブで量産するというのも今年中に一個簡単な物が出ますし、アディティブを使うことで僕たちの設計の技術のポテンシャルを一番発揮できます。アディティブは一番フィットしているけど結局量産品を作るとするとアディティブじゃないのもたくさんあるということです。

Nature Architects

ヘッドフォン:耳あてのクッション性、その裏のボールジョイント、フレームの適切なしなり、軽量化など複数の機能を構造設計し一体で3Dプリントされたヘッドフォン  [ 画像提供:Nature Architects ]

AMの「ハマる」ポイントを探さないといけない

杉本:
めちゃくちゃ面白い話だと思っていて、AM自体が、絶対じゃないですよね。最適にハマるところっていうのを今探しにいってるっていう話がある中で。

大嶋:
そうなんですよね。

杉本:
もちろん形状だけでもそういうこともあるし、製造ロットだったりとか、製造場所とか、によっても結構その変わってくるだろうなとは思っていて、多分それがまだ発見され切ってないっていう感じ。

大嶋:
全然発見され切ってないですね。

杉本:
それを大嶋さんたちは、AMが広がっていくかもしれないっていう文脈からすると、それを広げるのに一躍買うって感じですよね。

AMじゃないとできない形があるっていうのは、あとでちょっと議論したいなと思うんですが、AMの絶対的な価値と相対的な価値ってあるなと思っています。
移行期においては多分相対的価値って結構重要です。
そこを理解しておかないと、絶対AMってわけじゃないんだよねっていう話、ありますよね。

用意した質問に順番に移って行こうと思うんですけど、愚問と言えば愚問なんですけど、AMって、聞いたことありますかって質問なんですけど、あるに決まってますね(笑)

最初はどこで聞いたのかっていう話と、ポテンシャルなどを含めどういう印象を持っているかという質問をしたいと思うんですけど。最初はどこで聞きましたか?

大嶋:
最初は僕その学部が、慶應大学のSFC、環境情報学部っていうとこだったんですけど、そこでなんかいろいろやってて、ロボット作っていたんですけどね。

で、群ロボットを作っていて、全然別の文脈として、Reprapっていうのがあるぞということを先生から聞きました。3Dプリンターって物があって、さらにその3Dプリンターが3Dプリンターを作るみたいな。それって若干比喩も入っていて、僕は語弊があるので好きじゃないんですけど、その様な話を聞いてそこが最初でした。

その後、田中先生がMITにサバティカルに行って、帰ってきたときぐらいに3Dプリンターを持ってきてというか、先生が自宅に持っていて触ったっていうのが一番最初の出会いです。

杉本:
その時と今とで多分AMに対する印象って変わったんだろうなと思うんですが、どの様な感じにシフトした印象がありますか。

大嶋:
僕の意見って一般論だと思うんですが、デジタルファブリケーションって言葉から、デジタルマニュファクチャリングって言葉に概念的に大きく移行したのかなと思っています。

デジタルファブリケーションとパーソナルファブリケーションって個人の物づくりとかプロトタイプ用に3Dプリンタとかって、企業でも、あるいは個人というか、市民間?の間では使われてたと思います。

そういった物が今ではコモディティー化して、そういうファブスペースとかガレージスペースがそういったものを使われる、プロトタイプに使われる。

完全コモディティー化して、一方で、そういったことが流行ってるなかで水面下でたくさん投資して成熟してきたのが、マニュファクチャリング、製造からのアディティブがどんどん成熟してきていって、今ごくごく一部だけども量産に使われ始めたりとか量産に使うためのちゃんとした投資が集まり始めたってところですよね。

マニュファクチャリングのオルタナティブな手法として、しっかり注目される投資が集って、実用化が始まってきたってことろです。それが一番大きい。

杉本:
めちゃくちゃいい回答ですね。ありがとうございます。

新しい技術とスタートアップの融合

杉本:
話は変わりますがエレファンテックとどこで会いましたっけ?僕がいうのもあれですけど。

大嶋:
一番知ってる人ですからね。

杉本:
鎌田さん東大のあのスペースで紹介してもらってエレファンテックの投資家でしかも鎌田さんが大嶋さんところも投資している。要は投資家繋がりということでしたね。

大嶋:
具体的には本郷テックガレージってところでしたよね。

杉本:
いや本当にあれはすごく機能してると思います。

大嶋:
あれはすごく機能してますよね。

杉本:
してるしてる。
最初の段階ではどういう印象をお持ちでしたか。当時はAgICでしたけど、伺いたいです。

大嶋:
エレファンテックさんに杉本さんの印象が強すぎて。
なんかこういう風に研究とか自分の会社の話をする人がいるんだなと。語り口が他の人と全然違ってて、アジテーションするっていうか、学生をその、興味をひくアジテーションしながらプレゼンする人っていなかったんで、めちゃくちゃ新鮮でしたね。

AgICに関しては元々知っていました。僕もロボット作ったりしたりとか、紙に回路をペーパーカッターで印刷して作ったりしていて、ガチでやってるベンチャーがいるんだ、ていう風に感じました。

杉本:
ありがとうございます。
電子基板をインクジェットで印刷するっていうのをちなみに他でも聞いたことありましたかっていうのが正しいのかな、順番としては。

大嶋:
いや全然僕知らなかったです。他は。

杉本:
最初見た時ってどういう印象でしたっていうのを聞いて見たいんですけど。

大嶋:
ニュース記事ですけど、透明な膜に電子基板の印刷されているっていうニュースでした。それがスタートアップって形で出てきたんで、両方の印象がありましたね。新しい技術と、スタートアップが紐づいた物として、世の中に出てるなって、当時はそういう風に認識してましたね。

杉本:
当時はっていうのは大嶋さんはあのあれですよね。

大嶋:
多分普通に研究者でしたね。博士か修士のあの、学振とかで給料もらって。

杉本:
そういう立場からするとあの、ベンチャーと研究が一体になってその、社会にインテグレートされようとしている、そういう人たちだったんだねって印象はあったっていう。

大嶋:
当時は自分としては物珍しかったというか、僕もなんか会社を興そうと具体的には思ってなかったので。

杉本:
しっかりこっち側じゃないですか、っていうね。

大嶋:
そうそう気付いたらね。