【インク吐出評価サービス ブログ : 4】インクジェット吐出に関わる物性について

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IJ技術を中心に様々な方々とやり取りさせていただいております。紙への印刷にて発展を遂げてきたインクジェット技術ですが、様々な液体をインク化して産業的に利用しようとする動きが活発であることを実感しています。
インクジェット技術に長い年月を携わってきた方や、これからインクジェット技術を活用したいと希望する方もいらっしゃいますし、しかもお客様が描画したいインクは多種多様であるため、私も学ぶことが多い機会となっています。

インクジェット吐出に関わる物性値 評価した様々なインク


インクジェット吐出評価では、インクをご提供して頂き、エプソン製のPrecisionCoreヘッドにて評価を行います。液体としての特性とインクジェットヘッドとのマッチング適性があるかという観点で評価を行うことになります。

まず初めに挙げられる大切な物性は粘度 [mPa·s]です。

当社で使用しているインクジェットヘッドは 10mPa·s までの粘度領域に適性があります。それ以上になる場合も波形調整などで対応することが可能かもしれませんのでご相談ください。一般的にはレオメータなどの計測器にて、あるせん断応力を受けた時の物性値として計測されます。インクジェット現象は約数十µm程度の小さなノズルの中を高速に押し出されて吐出されるため、非常に高いせん断力を受けます。実際にはレオメータでは再現できないような高いせん断力を受けるため、吐出中の粘度は一般的な計測器では計測できないと言われています。よって、インクジェット吐出中の動的な粘度特性を想定することは非常に重要だと考えています。

次に表面張力 [mN/m]です。

一般的にはバブルプレッシャー法などの計測器で計測されることが多いのですが、インクジェットの液体が纏まる時の高速挙動に比べると低い周波数領域での計測となるため、これも吐出中の動的な表面張力がどの程度になっているのかは一般的な計測器では計測できないと言われています。最近ではインクジェットスケールの物性値を計測する方法として、インクジェットの液滴形成プロセスを高速度カメラ等で形状認識することで物性値に置き換える方法などが考案されており、実際の挙動中の物性が推定できるようになってきたと理解しています。

残りの物性としては、密度 [kg/m3]、音速 [m/s]、体積弾性率 [Pa]です。

体積弾性率は、密度×音速の2乗という関係性です。こちらは、圧電素子が変形した際にインク中に発生する圧力と伝わり方に関係します。体積弾性率が高い方がより高い圧力が発生できると言えますし、音速が早い方が圧力は早く伝わることになります。これらの物性は圧力の伝わり方に影響するので、ピエゾをどのように動作させるのか?つまり、波形制御に関連する大切な物性と考えています。しかし、この物性は使用する液体に依存するので、大きく調整することは難しいと考えられます。


インクジェットインクを扱う上で重要な物性を紹介しました。これらの情報があると波形調整を実施する上で非常に参考になるので、情報提供いただけると私としても有難いと思っています。