さて、弊社のブログを見ている方はおおよそ電気屋さん、特に基板設計者の方だと思います。ですがフレキシブル基板の特性を生かすためには機械設計との連携が不可欠です。
そんなわけで機械屋さんから見たフレキシブル基板のお話をしたいと思います。
1.フレキシブル基板のメリット、デメリット
何度か当ブログでも出ていますが、ざっくりと定性的にリジッド基板と比べた場合のメリット、デメリットを列挙してみます。
・メリット 薄い。軽い。小さい。曲がる。部品点数が減る。
・デメリット 弱い。高い。多層化が難しい。許容電流が小さい。
この中で機械屋さんが気を付けるべきなのは曲がる、弱いというところでしょうか。特に曲がるという事はいろいろ応用が利きます。基板を収めるスペースの確保が楽になりますし、可動部分をまたいで一枚の基板を使う、曲がった、あるいは曲げられる製品を作ることもできます。
2.曲げる!
というわけで基板を曲げて配置してみましょう。
注意しなければならない点の一つのは部品は曲がらない(曲げられない)ということです。ですので部品実装部分は補強板を使用して平面にするのが基本です。部品が小さく、曲面が緩ければ曲面に実装することはできるかもしれませんが、部品の足には大きな力がかかります。平面を準備しましょう。曲面を複数の平面で近似してもいいですね。そしてその平面同士をつなげてやればすべての平面が部品実装面積として有効活用できるのです!しかも面倒な配線作業無しに。
さて、もう一つ注意しなければならない点があります。基板は一枚の平面に展開可能でなければならないということです。要はペーパークラフトですね。製造段階では一枚のシートですので致し方ありません。ペーパークラフトの要領で展開していきます。この時切り込みを入れた部分は電気的にも切断されます。基板屋さんの苦労が偲ばれます。
また、いかにフレキシブル基板といえども伸縮はしません。これもペーパークラフト同様です。なので部品実装部分でなくとも球面やねじれた面に沿わせる事はできません。ですので平面同士をつなぐ際には展開できる円筒面や円錐面でつないでください。また、最小曲げRは守ってくださいね。可展面と言うらしいです。初めて知りました。
これで好きなように基板を製品に押し込むことができるはずです。さらにスイッチ、表示の位置も思いのままです。やったぜ。
3.動かす!
実際のフレキシブル基板の活用例としては一番多い例かもしれない、製品として使用する際に動く部分を電気的につなぐ方法です。動きとしては並行、回転の2種類がありますが、基板にとってみればどちらも曲げられたり伸ばされたりする動きになります。
耐久回数を延ばすために気を付けることとしては曲がりをゆるやかにすること、その変化を小さくすること、外力が加わらないようにすることです。回転部分の設計では巻き数を増やすことにより変形を小さくすることができます。ヒンジとスライド機構については先例が多数ありますので参考にするとよいです。曲がりをゆるやかにしているつもりでも補強版や部品の角で局所的に曲がりがきつくなってしまう場合があるので注意してください。
その他の動きに関しても上記の応用で乗り切れると思います。耐久性はさまざまな条件によって変わりますので実験することをお勧めします。
4.保護する!
そもそも基板に力をかけたくないですよね。ましてやフレキシブル基板は薄いので、どうしてもリジッド基板に比べて弱いです。さて基板に外力が働く場所としてはスイッチと外部コネクタでしょう。それらの取り付け方法としてはまず補強板を使用してリジッド基板と同様に取り付けを行う方法があります。
もう一つの方法としてはフレキシブル基板にコネクタを取り付け、そのコネクタを筐体に固定する方法があります。こちらの方が強度を高くでき、はんだ付け部分に力が加わらないので信頼性は高いです。対応するコネクタがなかなかなく、組み立てが大変ではありますが。
さてもう一つ基板に力が加わる状態があります。それは加速度です。特に落下時の加速度は大きく、注意する必要があります。フレキシブル基板自体は非常に軽いのですが、電子部品は重いので、部品実装部は必ず筐体に固定しましょう。部品実装部以外も適切な間隔で筐体に固定すべきです。固定方法として一番手軽なのはテープによる固定になります。位置決めを兼ねてピンで固定するのもよいでしょう。
5.アピールポイント!
最後になりますがフレキシブル基板は設計上の問題を解決してくれる非常に便利なものです。特に場所がない、軽くしたいときは強力な武器です。自信をもって電気屋さんに詰め寄りましょう。「スペースは空けといたから。」