エレファンテック、銅ナノ粒子インクによる HDI マイクロビア形成プロセスを発表
– AI サーバーなどで需要の高まる高密度基板に新たなビア形成手法を提案 –

エレファンテック株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:清水信哉、以下 「エレファンテック」)は、このたび、 銅ナノ粒子インクを用いた、新たなHDI ビアの形成プロセス、銅ナノダイレクトめっき法を開発しました。

銅ナノ粒子インクを用いて形成したブラインドビア(MSAP)
AI サーバーなどの高機能化に伴い、より高速、高密度の基板が求められていますが、その大きなボトルネックになっているのが層間を接続するBVH(Blind Via Hole)形成です。HDI 基板の不良の40%がマイクロビアのクラックやめっきボイドであるとも言われており[1]、ビア形成プロセスの改善が急務となっていますが、従来の化学銅めっきによるBVH 形成では、下記の問題がありました。
– 反応時に副生成物として水素ガスが発生するため、特に小径ビアでガスが抜けづらくなることによるめっき不良リスク
– パラジウムという貴金属を必要とすることによるコスト高と資源リスク
– SAP プロセスにおいては、パラジウム除去工程の必要性と、パラジウム残渣による品質課題
– ホルムアルデヒド等の発がん性物質や水を大量に用いることによる環境課題
また、パラジウムフリー・アウトガスフリーの選択肢としてグラファイト系ダイレクトめっき技術も実用化されていますが、シード層が銅膜ではないことから抵抗値が高い等の課題が残されています。
当社ではこれらの問題を解決するため、専用のCu ナノ粒子インクを用いた新たなダイレクトめっきプロセスを開発しました。

技術の概要

本技術は、Cuナノ粒子インクの塗布と水溶液による還元処理を組み合わせて、BVH内に銅シード層を形成するプロセスです。

本技術ではまず、ビアにデスミア処理を行ったあと、Cu ナノ粒子インクを塗布します。ここで、新規開発したCu ナノ粒子はビア内壁に吸着するように設計してあり、乾燥させることで、ビア内にCu ナノ粒子が並んだ状態になります。
その後、還元液に浸漬してCu ナノ粒子の表面の酸化膜を還元することで、Cu 膜が形成されます。これが、化学銅めっきによるCu 膜の代わりとなり、ダイレクトめっきが可能となります。


プロセス概念図(MSAP/サブトラクティブ)
左から、穴あけ後、印刷後、電気めっき後(MSAP・コンフォーマル)

このプロセスにおいて、還元液は、ある意味で化学銅めっきの代わりとなりますが、化学銅めっきと比べて単なる還元工程であるため安定性が高く自由に設計でき、水素を発生しない還元液を用いることもできることで、その場合はアウトガスのない下地形成が可能になります。それにより、原理的にガス由来のボイドが生じなくなるとともに、パラジウムフリー、ホルムアルデヒドフリーの工程を実現できます。


化学銅めっきとの比較

本技術は、SAP、MSAP、サブトラクティブ、フルアディティブ、各種の方式に適用可能だと考えており、基本的には、化学銅めっきプロセスをCu ナノ粒子インク塗布プロセス+還元プロセスに変える形となります。インクジェット 用インクとして用いることが可能であるため、選択的な塗布が可能です。

本技術は、新開発したHDI ビア用Cu ナノ粒子インクが、ビア内壁の凹凸に奥まで入り込んで吸着するという原理によって実現されています。今回新たに開発したCu ナノ粒子インクは、ナノ粒子が15nm という微小サイズゆえに高い表 面エネルギーを持ちますが、それによって表面を小さくしようとしてビア内壁に吸着しようとする力と、ナノ粒子同士が集まろうとする力を巧妙に制御することで、ナノ粒子同士が凝集するのではなくビア内壁、しかもガラスとエポキシ の両方に吸着するような状態を実現しました。それでいて、内層銅箔上のCu ナノ粒子を除去する必要がなく、還元、めっきを行うことで内層銅箔と強固な導通状態を作ることが可能です。

インクジェット印刷直後のビア内壁の断面画像

評価結果

本技術で試作したビアは、下記のヒートサイクル試験をクリアしています。

4層HDI 1-2-1 板厚1.6mm
穴径(TOP) Φ0.1mm、 絶縁層厚 0.06mm、狙いめっき膜厚20μm
L1-L2 Via x36 chain, L3-L4 Via x32 chain
温度条件:-65℃(15min.)/125℃(15min.)
試験サイクル数:700 cycle
判定基準:導通抵抗変化率±10%以内
評価結果:合格
700サイクル経過後において、抵抗変化率は判定基準(±10%以内)に対して極めて軽微な推移に留まっており、断線やクラック等の異常がないことを確認し、本試験に合格しております。

今後の展開

当社は今後、PCBメーカー様への印刷機、インクの供給を通じて、本技術の実用化を進めて参ります。
また、本技術に用いるBVH向け Cuナノ粒子インクは既に安定した製造技術を確立しており、ビア形成のサンプル加工が可能です。導入にご興味をお持ちのメーカー様向けにサンプル加工も行っておりますので、ぜひお問い合わせください。

[1]: https://www.ltcircuit.com/news/how-to-identify-and-fix-hdi-pcb-design-versus-manufacturing-issues-241046.html

お問合せ

エレファンテック株式会社:IJ装置材料事業本部 営業部 ijs-sales-unit@elephantech.co.jp
会社概要
会社名 エレファンテック株式会社
設立 2014年1月
本社所在地 104-0032 東京都中央区八丁堀四丁目3番8号
代表 清水 信哉 代表取締役社長 / CEO / Founder
事業内容 製造装置・材料製造販売、プリント基板の製造販売
URL https://elephantech.com/
メディアコンタクト

エレファンテック株式会社 広報担当 pr@elephantech.co.jp