エレファンテック、次世代パワー半導体向け接合材SAphire™ Dを開発
– 自己組織化銅ナノ粒子を用いた低温焼結型銅ナノペースト –

エレファンテック株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役:清水 信哉)は、この度、次世代パワー半導体向けに、自己組織化銅ナノ粒子(SA-CuNP)を用いた低温焼結型銅ナノペーストSAphire™ Dの開発に成功しました。

本製品は、「ミクロンサイズの銅粒子表面が、ナノサイズの銅粒子で被覆されることで、全体が大きなナノ粒子かのように振る舞い、低温で焼結する」という新たなメカニズムを用いた銅ナノペーストです。ナノ粒子の割合が10 wt%程度とこれまでの常識では考えられないほど少ない添加量で、ミクロンサイズの銅粒子*1が主体でありながら、250 ℃の低温焼結で40 MPa超という極めて高い接合強度と、6.4 μΩ·cmの低い体積抵抗率を実現しました。


図 SAphire™ Dと通常の銅ナノペーストの違い

当社はこれまで、環境負荷低減に貢献するプリント基板(PCB)事業を推進してまいりました。今後は本開発を起点に、当社が培ってきた「ナノマテリアル技術」を活かし、急成長する半導体パッケージングやAIコンピューティング分野へも事業領域を本格的に拡大してまいります。

開発の背景

これまで、パワー半導体チップと放熱基板の接合には、半田が用いられてきました。一方で半導体チップのハイパワー化・高発熱化が進む中、半田接続では再溶融のリスクや熱伝導の低さによる放熱不足などの課題が顕在化しています。
半導体のハイパワー化の制約を解消する次世代接合ソリューションとして、高温度域においても再溶融等のリスクが無く、強固な接合を維持し、かつ熱伝導率の高い「焼結接合材料」が求められています。

図 パワー半導体駆動温度域から見る焼結接合材料の必要性

焼結接合材料としては、ナノ材料の融点降下現象を活用した手法が有力とされています。先行して銀ナノ粒子ペーストが検討されてきました。これは、銀をナノ粒子化することで融点降下現象を利用し、バルク状態では融点961 ℃の銀を約200 ℃で焼結可能にしたペーストです。焼結後は銀本来に近い特性を示すため、接合部は銀の融点である961 ℃近傍まで再溶融しないという特長を持ちます。

ただし、成分の大半が純銀であるためコストが高く、用途は限定されてきました。加えて、近年の銀価格の高騰により、広く普及する材料とすることは難しくなっています。こうした背景から、銀の約100分の1程度のコスト水準である銅を用いた銅ナノ粒子ペーストの開発が期待されてきました。

しかし、銅は銀に比べて酸化しやすく、低温での焼結が難しいという課題がありました。融点降下を利用するためには粒子をナノサイズまで微細化する必要がありますが、ナノ化すると比表面積の増大によって酸化しやすくなるほか、酸化を防ぐためにナノ粒子表面を保護する有機分子を多量に必要とし、かえって焼結しにくくなるという「銅ナノ粒子のパラドックス」を抱えていました。これに対し、ナノサイズより大きなミクロンサイズの銅粒子は酸化しにくいものの、融点降下が生じないため、低温焼結を実現することができませんでした。



図 焼結材料としての『銅ナノ粒子のパラドックス』

今回の技術的ブレイクスルー

当社はこのパラドックスを解決するため、「ミクロンサイズの銅粒子表面が、ナノサイズの銅粒子で被覆されることで、全体が大きなナノ粒子かのように振る舞い、低温で焼結する」という新たなメカニズムを見出しました。これは銅ナノ粒子の自己組織化現象を利用したものであり、このメカニズムを活用して開発した銅ナノペーストSAphire™ Dは、以下のような特長を備えています。

1. 自己組織化現象を活用したミクロンサイズ銅粒子の低温焼結の実現

  • 従来、ミクロンサイズの銅粒子は、低コストかつ安定性に優れる一方で、低温での焼結が難しいという課題がありました。
  • 当社は、銅ナノ粒子の自己組織化現象を活用することで、焼結型銅ナノペーストの主材料であるミクロンサイズの銅粒子を、ペースト中に10%程度含まれる少量のナノ粒子で被覆することに成功しました。
  • これにより、ミクロンサイズの銅粒子表面に実質的に「大きなナノ粒子」のような表面特性が付与され、金属成分の約90%がミクロンサイズの銅粒子であるにもかかわらず、200℃から焼結可能な優れた低温焼結性を実現しています。


2. 有機分散剤の使用量を最小化し、高金属含有のペーストを実現

  • 一般に、ナノ粒子を主体とするペーストでは、安定した分散状態を維持するために、数%以上の有機分散剤を添加する必要があるという課題がありました。
  • 当社は、ナノ粒子の添加量を最小限に抑えつつ、それらをミクロンサイズの銅粒子表面に自己組織化させることで、1 wt%未満という極めて少量の分散剤でもペースト全体に行き渡る設計を実現しました。
  • その結果、高い金属含有率と安定した分散性を両立したペーストの開発に成功しました。


本技術は、当社が2025年12月に発表した「自己組織化銅ナノ粒子(Self-Assembling Cu Nanoparticles, 以下SA-CuNP)技術」のコンセプトを発展・継承したものです。

SA-CuNPSA-CuNPが銅ミクロン粒子に自己組織化する現象を捉えた走査電子顕微鏡(SEM)像

本製品の優位性

銅ナノ粒子の自己組織化現象を活用した低温焼結型銅ナノペーストSAphire™ Dは、焼結接合材料として以下のような優位性を備えています。

1. 高い接合強度と低抵抗

  • 無垢銅同士の250 ℃での加圧接合において、40 MPa超の接合強度を実現しました。
  • さらに、200℃においても、加圧焼結により25 MPa以上の接合強度を実現しています。
  • また、無加圧条件でも6.4 μΩ·cmの低抵抗率を実現しています。


2. 優れたコスト競争力と用途展開性

  • ナノ粒子の配合量を少量に抑えていることから、製造コストの面でも優位性があります。
  • そのため、ダイアタッチ材のみならず、大面積のTIM*2材をはじめとする放熱材料への展開も期待されます。
基板×Cu paste×Si チップの外観


ダイアタッチサンプルの断面画像


放熱基板実装想定サンプルの断面画像

今後の展開

低温焼結型銅ナノペーストSAphire™ Dは、既に世界の主要なパワー半導体メーカーにおいて、ダイアタッチ材及びTIM用途でのサンプル評価を開始しており、今後、量産プロセスへの適用に向けた取り組みを一層加速してまいります。

これに伴い、当社は従来のPCB事業の枠を超え、「Nanomaterials Powering AI Computing」をキーワードに、ナノマテリアルを起点とした製品・ソリューションの提供を通じて、AI時代における技術課題の解決に貢献する企業として成長を目指してまいります。

*1: 概ね直径0.4μm以上の粒子をミクロンサイズの粒子と定義

*2: TIM = サーマル・インターフェース・マテリアル

お問合せ

エレファンテック株式会社 事業開発部
bd@elephantech.co.jp
会社概要
会社名 エレファンテック株式会社
設立 2014年1月
本社所在地 104-0032 東京都中央区八丁堀四丁目3番8号
代表 代表取締役社長 清水 信哉
事業内容 製造装置・材料の製造販売、プリント基板の製造販売
URL https://elephantech.com/
メディアコンタクト

エレファンテック株式会社 広報担当 pr@elephantech.co.jp