フレキシブル基板は普通のプリント基板(リジッド基板)と比べると、気軽には利用できません。
取り扱いは難しく、設計にも工夫が必要ですし、価格もリジッド基板より高いからです。それではなぜフレキシブル基板の利用が進んでいるのでしょうか?
フレキシブル基板には欠点も多くある一方、リジッド基板の問題を解決してくれる面もあります。そのメリットとデメリットを比較した結果、フレキシブル基板の導入が進んでいるのです。
リジッド基板のよくある問題
それでは具体的にリジッド基板を使っていてどのような問題が起きるのでしょうか。フレキシブル基板(FPC)の導入を決める大きな理由として次の二つがあります。
1. 配線がごちゃごちゃ…
フレキシブル基板を使う理由で非常に大きいのが、「配線をすっきりできる」という点です。
リジッド基板をたくさんの配線で繋いでいると間違えやすく組み立ての失敗の原因にもなります。それらの配線をフレキシブル基板に置き換えることで、何本ものケーブルを接続する代わりにフレキシブル基板を接続するだけで配線が完了します。
この写真はエレファンテックで無料配布している(2018年1月現在の)サンプルのフレキシブル基板と、同じ基板をリジッド基板で作ったものの比較です。
例えば、同じものを「リジッド基板+ハーネス」と「FPC P-Flex® 」で作った場合を比較すると、見た目にも配線がシンプルになっているのがわかります。
具体的には
重量低減 12g → 1g
図面低減 4枚 → 1枚
部品点数低減 25個 → 14個
FPC P-Flex® で、ハーネス・基板一体設計のセンサーモジュール化することによって、部品点数削減、製造工数・メンテナンス費用削減、信頼性向上、軽量化、省スペース化をはかります。
2. 製品が大きい
フレキシブル基板を使うもう一つの大きな理由が「省スペース化」です。
基板にもよりますがリジッド基板や通常の配線材を用いた場合と比べてサイズは半分以下になると言われています。配線をすっきりさせるだけならフレキシブルフラットケーブル(FFC)を利用することもできますが、 FFCと比べてもフレキシブル基板はサイズが小さくなります。
スマートフォンやウェアラブルデバイスなど、現代の電子機器はフレキシブル基板無しでは作れないものばかりです。先述の基板もフレキシブル基板を使うことで小さくなっているのがよく分かると思います。
このような事情を背景に、これまでフレキシブル基板の導入が進み、また今後も利用シーンはますます増えていくと予想されています。
フレキシブル基板の導入と精密機器の進化
フレキシブル基板の普及は、単に製品がシンプルになったり小型になったりするだけではなく、新しい分野の製品開発を推し進めることにも繋がります。
フレキシブル基板のアイデア自体は今から100年以上前の20世紀初頭に生まれ、1950年代に大きな技術革新があり、その後軍事や航空など一部の用途から採用が始まりました。価格が高かったことは当初用途が限定されていた一因だと推測されますが、1970年代以降には一般の精密機器にも使われるようになります。その結果、携帯電話など精密機器の急速な小型化が進みました。
現在、FPC P-Flex® などプリンタブル・エレクトロニクスの発展により更にコストが下がることが予想されています。1970年代にフレキシブル基板によって新しい分野が発展したのと同じように、これまでフレキシブル基板が使われなかった分野での採用が今後広がり、発展していくのではないでしょうか。
フレキシブル基板の応用例
スマートフォンやメガネ型デバイスなどのウェアラブル機器では小型化のためにフレキシブル基板はもはや必須と言えます。また、自動車にもフレキシブル基板は多く使われています。ダッシュボードやボンネット内での配線材として、主に軽量化のために採用されています。
まとめ
現在フレキシブル基板の導入はますます進んでいますが、それは下の二つが大きな理由でした。
- 配線の簡素化
- 省スペース化
今後もより安価なフレキシブル基板が登場し、ウェアラブル機器など新しい分野を含めますます利用シーンが広がっていくでしょう。