4DFF発表報告「機能性タンパク質から味や香りまで、機能性印刷におけるピエゾ式インクジェットヘッドの可能性」

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 2020年10月15、16日に開催された Conference on 4D and Functional Fabrication 2020(4DFF)にて、エレファンテックは3件の発表を行いました。4DFFは 4D&ファンクショナル・ファブリケーションであり、3Dプリンティングによるファブリケーション(ものづくり)の未来について考える会議と位置づけられています。

 エレファンテックAMCはAM技術の発展を目指しているので、毎年このコミュニティーでの情報交換を進めております。

 まずは齊藤が発表した内容について、概要と聴講者からの反応を記載します。

SC-07「機能性タンパク質から味や香りまで、機能性印刷におけるピエゾ式インクジェットヘッドの可能性」

 本検討では、水系インク向けに調整されているエプソン製のピエゾ式インクジェットヘッドの強みを活かし、低粘度領域の液体を吐出させる実験を行い報告しました。今回評価した液体は、今後成長が期待されるヘルスケア分野やFoodTech 分野で活用されそうな材料から選定し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS 溶液)、レモン果汁、醤油としました。本報告では、吐出性を中心に紹介し、応用事例による将来の展開も述べさせていただきました。

 結果としては、ほぼ水と同等の物性値であるPBS溶液も安定して吐出させることが可能であることを確認しました。また、レモン果汁や醤油についても同様であり、描画サンプルを作成することが出来ました。醤油は描画中に香ばしい香りが漂い、食欲をかき立てる効果もありそうなので、インクジェットを活用することで面白い効果も発見しました。

リトマス紙に描画したレモン果汁リトマス紙に描画したレモン果汁
光沢紙に描画した醤油光沢紙に描画した醤油

 今年はオンラインの開催でありましたが、発表形式は自由討論が長いショーケースであったために、聴講者と活発な議論が取り交わせました。

 その中から、質疑の概要をお伝えします。

 聴講者の多くの関心は、安全性および実用化でした。
 特に、食品系の液体をインクジェットで描画することへのコメントが多かったです。次のステップでは味覚を確認したくなることから、マイクロカプセル化の提案や、吐出させた液体の析出物の調査、食品安全性の法規制の観点など、懸念事項の指摘がありました。
 また、味覚の感性評価として、微小液滴コントロールが出来るであれば、評価に使ってみたいとのご意見もありました。
 インクジェット専門家からは、「思い切った評価をやりましたね。普通はやりたくても手が出せない評価だと思います。」といった感想もあり、レモン果汁(酸)や醤油(塩分)は、ヘッドにダメージを与える可能性もあるため、このような評価をすることが少なく技術的にも関心度が高い印象を受けました。また、低粘度域での吐出について、特に水が安定して吐出できることを驚かれる技術者も多かったです。