フレキシブル基板(FPC) P-Flex®は電子回路の3Dプリンタ?実はちょっと違うんです!

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型レス・印刷で作れるフレキシブル基板 P-Flex®は、よく「電子回路の3Dプリンタ」と呼ばれるのですが、実はその後ろにある思想は大きく異なります。あまり語られることのないその思想の部分について、記しました。

 

エレファンテックの清水です。
今回は技術情報というよりは、思想的な部分を書いてみようと思います。

我々のインクジェット印刷フレキシブル基板(FPC)「P-Flex®」は、

  • インクジェットで印刷するので型が要らない
  • プロセスが簡単なため製造スピードが速く、納期が短い

といった利点から、よく「電子回路の3Dプリンタ」と例えられることがあります。分かりやすい言い方でもあるので、私もよく使うことがあるのですが、実はその背景にある思想は大きく異なります。
それは、

「フレキシブル基板(FPC) P-Flex®は試作ではなくあくまで量産を目的としたものである」

という点です。
3Dプリンタは技術的にどうしても射出成形等に比べれば量産性が悪いため、多くの場合あくまで試作か、工場治具などの1品物などに用いるのが普通でした。
プリント基板についても、実は「試作だけ」を効率化する方法は今までも存在していました。
レーザーでパターニングする方法や、(フレキシブル基板ではあまり使われませんが)切削でパターニングする方法などです。
上記のような方法は、あくまで試作・1品物のみを低コスト化することを目的にしたもので、その後の量産性を求めたものではありません。実際、量産時には別途量産設計をし直して、型を起こして生産することを念頭に置いて用いられることがほとんどだと思います。
一方で P-Flex®で用いているインクジェット方式は、試作から量産まで広く対応できる技術になっています。インクジェットというと、家庭用インクジェットプリンタのイメージが強いため、遅い、精度が悪い、量産には向かない、というイメージがあると思いますが、実はそんなことはありません。それは

  • インクジェットは、材料の無駄が非常に少ない製造方法である
  • 産業用インクジェットは量産に十分な速度がある

という理由によるものです。実際、液晶ディスプレイのカラーフィルタの製造にはインクジェット印刷が採用されており、それによって塗布工程で消費される材料・コストをおおよそ半分に削減しているというデータもあります。実はインクジェットは、量産でこそ最も力を発揮する製造方法なのです。

3Dプリンタとの思想の違いをまとめると、以下のようになります。

フレキシブル基板(FPC) P-Flex®は電子回路の3Dプリンタ?実はちょっと違うんです!

結局のところ、3Dプリンタで試作を行っても、量産時に型を作ってみると仕上りが異なった、量産時の不良を考えると設計を変更する必要がある、ということはよくあります。我々はそういったことがないよう、試作から量産までシームレスにサポートしたい、そういう思いでこの製品を作っています。

もちろん、現状では製造ラインに限りがあり、1ロット数万~十万程度であればいいものの、直ちに百万単位のロットに対応できるかというと、対応できなくなってしまう部分もありますが、今後さらに製造技術を向上させ、世界のあらゆる製品に対して、弊社の製品をご利用頂けるよう、頑張っていきたいと思います。

(清水 信哉)