【フレキシブル基板にチャレンジ!】電卓編[11]:疑似リフローに挑戦!

  • この記事は最終更新日より2年以上経過しています。内容が古くなっている可能性があります。

【フレキシブル基板にチャレンジ】シリーズ とは
エレファンテック技術ブログ新企画、東工大の学生が初めてフレキシブル基板を使って、実際に電子工作する試行錯誤のレポートです。 失敗を繰り返し、本人たちは落ち込んでいることも多いのですが、読者のみなさん目線からすると、逆にものすごく参考になるのではないでしょうか。 とても面白いシリーズです!

 << 前の記事 次の記事 >> 

こんにちは、平野です。
今回は実装編のおまけとして、ステンシルを用いた疑似リフローについて紹介します。

もっと楽がしたい!!

当シリーズ10回目の記事【フレキシブル基板にチャレンジ!】電卓編[10]:基板実装リベンジで、我々はクリームはんだを用いてはんだ付けを行いました。(まだ読んでいない方は是非お読みください!)

クリームはんだの写真

△無意味にクリームはんだの写真

その際、クリームはんだをパッドに塗布する作業はすべて手作業で行っていました。そのため、非常に時間と手間がかかる上に、パッドごとに乗るクリームはんだの量も違ってしまい、仕上がりが多少汚くなってしまったりしました。
そこで今回は、ステンシルというものを用いたはんだ付けの方法を紹介します。

ステンシルってなに?

実際にはんだ付けを行う前に、ステンシルについて一応触れておきたいと思います。
ステンシルという言葉自体は、別に電子工作の分野の用語というわけではありません。
大雑把に言うと、特定の形をペイントしたい時などに紙などをその形にくりぬき、それの上から塗料を塗ることで簡単にペイントすることができるというものです。

ステンシル

△参考画像(引用元:【楽天市場】HANSON プラスチック・ステンシルプレート 46ピース英数字セット 3インチ (081834101934) HANSON ステンシル:DIY FACTORY ONLINE SHOP)

でははんだ付けに用いるステンシルとはどのようなものなのでしょう?
一般的にステンシルは塗料を塗る際に用いますが、はんだ付けをする際に塗るのはクリームはんだです。
つまり、はんだ付けに用いるステンシルは、基板のパッドの位置に穴が開いているというわけです。
ステンシルを基板に重ねて上からクリームはんだを塗ることでパッドに、適量のクリームはんだを簡単に乗せることができる優れものというわけです!

そしてこちらが今回のはんだ付けに用いるステンシルです。
今回は、中国の基板製造会社elecrowさんに発注して製造してもらいました。リジッド基板の製造などを安価に行えることで近年一部界隈で有名[要出典]な基板製造メーカーさんですね。製造にかかった費用は$16でした。

今回使うステンシル

△今回使うステンシル

ちなみに本編全く関係ない余談ですがこのステンシルと基板、

中国・深圳市にあるelecrow本社で現地受け取りしました。

なぜそんなことをしているのかって?
まぁぶっちゃけると個人的な深圳旅行と時期が重なったからそうしただけで普通に郵送で受け取ることは可能です。

しかしこう考えてみるとどうでしょう?
6万払って深圳旅行するとタダで基板が受け取れるんです。

Amaz〇nPrimeなんかとは比較になりません。
月額料金を払わずとも送料がタダになるんです。もうめっちゃお得ですね。

…え?elephantechにウォークイン?いつかできる日は来るんでしょうか…

さっそくやってみよう

それはさておき早速疑似リフローをやっていきます。
ちなみに、元々はフレキシブル基板でリフローをやろうというお話だったのですが、練習でうっかりフレキシブル基板を使い切ってしまったため今回は一緒に頼んでおいたリジッド基板で実験していきます。

まず基板を机に固定します。

基板を机に固定します。

上にステンシルをのせ、位置を合わせて固定します。
上にステンシルをのせ、位置を合わせて固定します。
クリームはんだを出して塗ります!

クリームはんだを出して塗ります!
上にステンシルをのせ、位置を合わせて固定します。 2
クリームはんだを出して塗ります! 2

ほんとはちゃんとしたへらを使ったほうが良いのですが、探してくるのが面倒だったので余った基板をへら代わりに。
(ちなみに話は逸れますが、この基板は次に作るロボットアーム用に設計した基板です。お楽しみに。重ねてちなみにですがこちらも送料無料)

かんせい!!
完成 はんだ

……なんかはみ出まくってますね……

原因はなんとなくわかっております。
実はステンシルを固定するときに、基板のある部分と机の固定する部分の高さをそろえていなかったため、ステンシルが多少反ってしまいステンシルと基板の間に少し隙間が空いてしまっていたのです。
なんとかなるかなぁと思ったのですが、重ねてクリームはんだを無駄にしたくないが故にちょっと出しては塗り、ちょっと出しては塗りを繰り返してしまったので隙間に余分なクリームはんだが入り込んでしまったのでしょう。
横着はダメ!!!!
このシリーズでこの流れ何回やれば気が済むんでしょうね……

気を取り直して二回目。

気を取り直して二回目。

……まあさっきよりは全然マシだと思います。

というわけで部品を載せていきます。

マイコンの在庫がなくなっていることにここで気が付くお粗末さ。

のせました!
…マイコンの在庫がなくなっていることにここで気が付くお粗末さ。
仕方がないのでマイコン以外を付けます。

ここからは前回とあまり変わらない作業なので、はんだ付けの詳細は割愛して部品の乗った基板の写真をお見せします。こちらです!

はんだ付けの詳細は割愛して部品の乗った基板の写真

…といった感じですんなり終わりましたみたいな記事になるんだろうと思っていたんですが、実ははんだ付けに意外と苦労しました…。

問題は主に二つ。動画を撮ろうとしたことと、ヒートガンの口径が小さかったことです。

まず一つ目の問題の動画を取りながらやったことについて。正直なんで問題になるのか意味が分からない思うのですがまずは聞いてください。
動画を撮ろうとすると、基板の真上にカメラが来ます。

ヒートガンはどこからあてるか?そう、基板の斜め上からあてるわけです。
△こんなかんじ

その結果ヒートガンはどこからあてるか?そう、基板の斜め上からあてるわけです。

そうするとどうなるか?

チップ部品が熱風で動くわけです。

△大惨事

不器用かよ!!!!!!
しかしながら言い訳をさせていただくと、このはんだ付けはマイクロスコープで映された画面を見ながら行っており、ヒートガンやピンセットと基板の距離感が全然わからんのです…

さて、二つ目の問題は「ヒートガンの口径が小さいこと」です。
ちょっと話をそらして本来のリフローの話をします。本来のリフローでは、クリームはんだを塗った基板に部品を乗せた後、リフロー炉を用いて基板全体を同時に加熱します。個人でやる方はホットプレートで代用する場合もありますね。

つまり何が言いたいかというと、ほんとうは基板全体を同時に加熱したいというお話なのです。
今回は口径の小さいヒートガンを使っているのでそうはいきません。小さなチップ部品のほぼ一つずつにヒートガンをあてなければいけないわけです。
するとふとした瞬間に隣のチップ部品にもヒートガンの熱風が当たるわけです。
もうお分かりですね。

チップ部品が熱風で動くわけです。(二回目)

大きな口径のヒートガンがあれば複数の部品を真上から同時に加熱できるので、かなり楽になると思うんですけどどうなんでしょうね…
ただ正直こちらの問題は、自分の腕が足りないというのも確実に原因の一つなのですが…

さて、ネガキャンばかりしていては読者の皆さんがステンシルクソじゃんと誤解してしまいそうなのでちゃんと利点についても説明します。

まず、コネクタのような足が多く密集している部品のはんだ付けが本当に楽でした。
はんだがきちんと適量乗ってくれるため、加熱するだけできれいにはんだ付けをすることができました。量が足りなかったり多すぎたりのごたごたがないのは本当にうれしかったですね。
~~まあコネクタの足を加熱している間にまた近くのチップ部品が風で動くわけなんですけどね!!~~

そんなわけで、推測するにヒートガンを用いる場合、そこそこ大口径のヒートガンでいい感じの温度の風を程よい距離からあてるともう最高のはんだ付けができるのだと思います。
難易度…

結論

ステンシルはいいぞ?

と書こうと思ってたんですけど微妙に設備と自分の腕が良くなかったせいで心の底からそう言い切れない複雑さがあります…。

苦労した原因をまとめておきましょう。

  • ヒートガンを横から当てたら小さい部品が風で動いた
  • ヒートガンの口径が小さく、効率的な加熱ができなかった

逆に良かった点はここ。

  • 足の密集している部品のはんだ付けが本当に楽だった

正直この利点が欠点を補って余りあるので、はんだ付けする箇所が多い場合などは本当に楽になるはずです。しかもその欠点も、ちゃんとした設備とちょっとした練習でかなり欠点は解消できると思われます。
今回の場合は本当に上手くいかないのはだいたい自分の技量と知識が不足である感が否めないので今後も精進したいですね。
読者のはんだ付けのプロの皆さん、アドバイス等お待ちしています!

さて、今回はリジッドでのお試しという形になりましたが、今度はまた装備を整えてフレキシブル基板相手のはんだ付けもやってみたいと思います。

ステンシルを用いたはんだ付け、皆さんもぜひお試しあれ。