エレファンテック、無加圧接合に対応したパワー半導体向け接合材SAphire™ D02を開発 加圧低温接合に続いて無加圧低温接合を実現し、プロセス自由度を向上

エレファンテック株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:清水 信哉)は、この度、当社の低温焼結型銅ナノペーストSAphire™の新ラインナップとして、無加圧ダイアタッチに対応したSAphire™ D02シリーズの開発に成功しました。
通常、銅焼結ペーストで十分な接合強度を実現するには半導体チップを加圧しながら接合する加圧接合が必須であったのに対し、SAphire™ D02を用いることで無加圧でも十分な強度を実現でき、加圧接合工程が不要になります。それによってプロセス自由度を向上させ、ダイアタッチはもちろん、TIM(Thermal Interface Material)も対象として、より広い範囲でパワー半導体の熱問題の解決に貢献します。
開発の背景
これまで、パワー半導体チップと放熱基板の接合(ダイアタッチ)には、半田が用いられてきました。一方で半導体チップのハイパワー化・高発熱化が進む中、半田接合では再溶融のリスクや熱伝導の低さによる放熱不足などの課題が顕在化しています。半導体のハイパワー化の制約を解消する次世代接合ソリューションとして、高温度域においても再溶融等のリスクが無く、強固な接合を維持し、かつ熱伝導率の高い「焼結接合材料」が求められています。
そのニーズに応えるため、当社は2026年3月27日、ダイアタッチ向けの低温焼結型銅ナノペーストSAphire™ Dを発表致しました。これは銅ナノ粒子の自己組織化という独自の原理を用いることで、銅ナノ粒子の添加量が極めて少量であるにも関わらず低温焼結性を発現する画期的な材料です。
一方でダイアタッチ用銅ナノペーストの次なるロードマップとして、「無加圧プロセス化」がありました。通常、銅ナノペーストを用いた低温焼結のダイアタッチでは、十分な強度を実現するために半導体チップを加圧しながら焼結する加圧接合プロセスが必須であることが多く、当社が既に発表した銅ナノペーストも加圧接合向けを前提としていました。加圧接合は既存工程でも用いられる一般的なプロセスでありますが、当然ながら加圧が必要ない方がプロセスの自由度も上がるため望ましいとされています。
そのため当社でも、加圧接合を前提とした銅ナノペーストに加えて、無加圧接合用銅ナノペーストを並行して開発してきましたが、この度、無加圧接合で十分な強度を実現する新材料の開発に成功しました。
■ 無加圧焼結 vs 加圧焼結の簡易プロセスフロー図

SAphire™ D02の性能
今回、当社はSAphire™ Dの技術コンセプトをさらに進展させ、無加圧条件でも銅粒子同士の焼結ネットワークを形成しやすい材料設計を進めました。銅粒子間に焼結起点を効率的に形成し、加圧による外部応力に依存せず、接合界面およびペースト内部で緻密な焼結構造を形成することを目指しました。
温度ごとの接合強度を図に示します。これらのグラフはCu基板に対して、Cuを接合した場合と、Ti/Au処理のSiチップを接合した場合の結果で、焼結時間は60分です。SAphire™ D01は2026年3月27日に発表した当社の加圧焼結用銅ナノペーストです。Fig.1のSi/Ti/AuとCuとの接合に着目すると、加圧焼結用銅ナノペーストD01では無加圧では250 °Cでわずか1.6 MPaの強度しか得られていないのに対し、無加圧焼結用の新組成であるSAphire™ D02では良好な強度が得られていることが分かります。半田同等の20 MPa前後を一つの基準とすると、Cu-Cuでは200 °Cで、Si/Ti/Au-Cuでは250 °C無加圧焼結で達成できることになります。またFig.2では、ギ酸雰囲気ではなく窒素雰囲気での無加圧焼結でも、温度を280 °Cまで上げることで、十分な接合力を得られることが分かります。
Fig1 :ギ酸雰囲気下での無加圧接合による接合強度
Fig2 :窒素雰囲気下とギ酸雰囲気下での無加圧接合による接合強度比較■ 無加圧接合プロセスフロー図

無加圧接合の実現による効果
パワー半導体ダイアタッチ
無加圧による工程の簡略化によって、ダイアタッチ用焼結ペーストがさらに広く、素早く普及することが期待されます。ダイアタッチに旧来用いられてきた半田は耐熱性や熱伝導性が不足していることは前述の通りですが、一方で半田は溶融によって接合するため無加圧接合が可能であり工程が簡略というメリットがありました。焼結ペーストは性能面でのメリットがありつつも、加圧接合が必要になることから新規設備が必要になることも多く、普及に時間を要する、また適用できない製品も残ることが考えられました。
今回、焼結型銅ナノペーストの一般的な欠点であった低温焼結には加圧接合が必要である、という課題を解決することによって、より広く、素早く焼結型銅ナノペーストへの移行が進むことが期待されます。
パワー半導体TIM
パワー半導体のパッケージングにおいては、半導体チップと基板を接続するダイアタッチ材だけでなく、基板と放熱プレートを接続するTIMも用いられています。ダイアタッチは半導体チップサイズなので面積が小さい一方、基板と放熱プレートは面積が大きいため、強い圧力を均一にかけることが比較的困難であり、より無加圧接合の要求が強い工程です。例えば20 MPaの加圧接合の場合、必要な加圧力は5 mm角ダイアタッチでは500 N(約51 kg)ですが、50 mm角TIMでは50 kN(約5.1トン)にもなります。
本技術によって銅ナノペーストを用いた低温無加圧接合を可能にすることにより、パワー半導体TIMについても焼結ペーストへの移行が進み、パワー半導体の性能向上にさらに貢献することが期待されます。
今後の展開
低温焼結型銅ナノペーストSAphire™ Dシリーズは、既に世界の主要なパワー半導体メーカーにおいて、ダイアタッチ材及びTIM用途でのサンプル評価を開始しています。今回の成果を踏まえ、今後は量産プロセス適用に向けた取り組みを一層加速してまいります。
銅ナノペーストSAphire™は、これからの半導体の進化の最大のボトルネックである熱の問題の解決に貢献するキー技術であり、パワーモジュール内部の複数接合界面や高放熱・高耐熱性が求められる電子部品、光デバイス、AIコンピューティング関連デバイスなどを対象に、さらなるデバイス性能向上に貢献してまいります。
会社概要
| 会社名 | エレファンテック株式会社 |
| 設立 | 2014年1月 |
| 本社所在地 | 104-0032 東京都中央区八丁堀四丁目3番8号 |
| 代表 | 代表取締役社長 清水 信哉 |
| 事業内容 | 製造装置・材料の製造販売、プリント基板の製造販売 |
| URL | https://elephantech.com/ |
エレファンテック株式会社 広報担当 pr@elephantech.co.jp